太極拳の知識 本文へジャンプ



<太極拳練習の要項10項目>

1.姿勢(ズーシー)正確(ジェンチュエ) (zi shi zheng que) : 正確な姿勢をとる

基本の姿勢は、体を伸びやかに真っ直ぐにし1)、偏ったり歪めたりしない2)、ということです。体を中正に保ち、上体を端正自然にし、頭と背を真っ直ぐにして肩を沈め、胸は張りすぎずに楽に伸ばします。体は緊張したり、力を入れたり、あるいは逆に萎えた感じにしたりしてはいけません。姿勢が正しくないと太極拳の基本技術は絶対に正しく習得できません。また、健康面から見てもよい練習効果が得られないので、まず初めから正しい姿勢をとるようにしましょう。


1)中正安舒(ジョンジェンアンシュー) (zhong zheng an shu)

2)不偏不倚(ブーピエンブーイー) (bu pian bu yi)



2.重心(ジョンシン)安定(アンディン) (zhong xin an ding) : 重心を安定させる

太極拳を行なう時は、ほとんどの動作が中腰の姿勢です。特に片足で体重を支える動作が多いので、重心を安定させることが大切です。これは姿勢に大きな影響を与えます。重心の安定が保てないと足の運びが重くなり、体のバランスがとれずに動きが硬くなって、動作の中断が起こってしまいます。

これらを改善するための最も重要なポイントは、特に初心者の場合、脚力を増強させながら基本の歩法を正しくしっかりと覚えることです。たとえば、弓歩になる時、両足の横幅を10〜30cmの間隔できちんととれば、足を前に踏み出す時、無理に遠く着地しなければ安定した姿勢をとることができます。この基本ができていなければ、脚力がいくら強くても重心の安定を保つことは難しいのです。

重心の安定を保つための練習としては、その場での弓歩、また、繰り返し進む弓歩など基本動作を何度も行うことです。練習を続けていけば必ず脚力は強くなり、重心も安定して正しい歩法を行うことができるようになるでしょう。



3.(シン)静体(ヂンティ)(ソン)(xin jing ti song) : 気持ちを静め、体をリラックスさせる

心静とは、気持ちを落ち着かせ、意識を集中させ、雑念を排除し、静をもって心を養うことです1)。太極拳は動作が多く練習中はずっと動いています。しかし姿勢の高低や動作の変化などがあっても、心は静かにしておくことが大切です。つまり、動いているように見えても静かであり、静かであるように見えても動いている2)、ということなのです。そして、常に心理的・精神的に安定した状態で練習するように努めましょう。なぜなら心理的・精神的な状態を安定させれば、一つ一つの動作に意識を傾注することができ、体の動きを意念の活動に添わせる3)ことができるからです。

体松とは、体(特に上半身)をリラックス4)させ、筋肉・関節・靭帯および内臓などを伸びやかで自然などこにも圧迫感のない状態にすることです。つまり、意を用いて必要のない力は使わない5)ようにします。体を動かすと筋肉が伸縮します。この時に必要のない力を使ってはいけません。体を動かす時リラックスすることができれば、重心が安定しやすくなり、動作の転換もまろやかになります。逆に、必要のない力を使うと体が硬くなり、気血の循環が悪くなって、呼吸が苦しくなったりします。無駄な力を用いるとすべてが滞る6)のです。ただし、リラックスといっても無力で萎えている状態になってはいけません。練習する時、このことに注意することができるようになったら、よりいっそうの効果をあげることができるでしょう。


1)内固(ネイグー)精神(ヂンシェン)(nei gu jing shen)

2)動中(ドンジョン)(チョウ)(ヂン)(dong zhong qiu jing)

 視動犹(シードンヨウ)(ヂン)(shi dong you jing)、視静犹動(シーヂンヨウドン)(shi jing you dong)

 身雖動(シェンスェイドン)(shen sui dong)、(シン)(グアン)(ヂン)(xin guan jing)、

3)意領身随(イーリンシェンスェイ)(yi ling shen sui)

4)(ファン)(ソン)(fang song)

5)用意(ヨンイー)不用力(ブーヨンリー)(yong yi bu yong li)

6)用力則滞(ヨンリーズァジー)(yong li ze zhi)



4.呼吸(フーシー)自然(ツーラン)(hu xi zi ran) : 自然に呼吸する

太極拳を行うときの基本の一つは、呼吸を自然に行うことです。自然な腹式呼吸で、生理的に息を吸いたい時に吸い吐きたい時に吐き、まったく普段生活する時のようにごく自然に呼吸します。その際、呼吸は細く長く深く行い、できれば動作の速度と一致させ、息を吸う時、腹部をやや締めるようにします。太極拳の理論の中に、呼吸をうまく調整できて初めて動作が生気に満ちてくる1)という記述があります。これは太極拳における呼吸の重要性を示しているのです。

しかし同時に、太極拳は拳法として、意識的に技法と合わせて呼吸を行わなければなりません。技法には、起落(チールオ)(qi luo):上げる、下ろす、開合(カイフア)(kai he):開く、合わせる、虚実(シューシー)(xu shi):動作の転換、動作の完成、などの変化があり、基本的には上げる・開く・動作を転換する時に息を吸い、下ろす・合わせる・動作を完成させる時に息を吐くようにします。このように意識的に技法と合わせて呼吸を行うことを拳式(チュアンシー)呼吸(フーシー)(quan shi hu xi)といいます。けれども、太極拳の動作の変化は非常に多く、一つ一つの動作の間にはつなぎもあり、しかも長かったり短かったりするので、拳式呼吸ばかり考え無理に合わせようとすると練習は難しくなってしまいます。人間の体は機械ではないので、運動の中で機械のように呼吸を行うことは不可能です。理想的な方法は、自然呼吸に拳式呼吸を取り入れて合理的に呼吸を行うことです。簡単にいえば、普通は一つの動作が終わる時、拳式呼吸で息を吐き、後は自然な呼吸で調整します。太極拳の動作は何十種類もあり、また、方向の変化や動作の屈伸、開合、進退など動きが複雑です。初心者は最初、動作を覚えることで精一杯で、その上さらに呼吸法まで考えると息が苦しくなり、体が緊張し、疲れて余計に難しく感じてしまいます。ですから初めのうちは自然呼吸でいいのです。段々に動作に合わせた合理的な呼吸を行なうようにしていけば、心が平静になり気が和んできます2)。そうすれば気が養われ、動きも自由自在となり、鍛錬の効果を十分に得られるようになります。


1)(ノン)呼吸(フーシー)(ラン)(ホウ)(ノン)(リン)(フオ)(neng hu xi ran hou neng ling huo)

2)(シン)平気和(ピンチーフア)(xin ping qi he)



5.運転圓(ユンジュアンユエン)(フオ)(yun zhuan yuan huo) : 連続の円運動で動作を行う

圓とは、両腕を円形に保ちながら途切れなく弧線を描くように動くという、円運動のことです。外見は柔軟に見えますが、意識の上では両腕に丸みを持たせた時、外に張り出すような感じにします。ただし、絶対に無駄な力を用いて動作を硬くしてはいけません。

活とは、動作の一つ一つや流れを、意識の入った生き生きした感じ1)にすることです。つまり、腰を軸として足を、肩を軸として手を、円滑に連動させて生き生きと動きます。これを実践すれば、動作はよりスムーズになり、動作の転換も自由自在にできるようになります。


1)(リン)(フオ)(ling huo)



6.柔和(ロウフア)緩慢(フアンマン)(rou he huan man)
                力を入れずに意識を用いてゆっくり途切れなく変わらぬ速さで行う

柔和とは、意を用いて力を入れずに粘りのある柔らかい動作で行う、ということです。その動きの流れはあたかも繭から糸を引くようだ1)と言われています。とはいえ、柔和とは、力なくぐにゃぐにゃと動くことではありません。太極拳の理論では、動作はただ柔らかくするばかりではなく、柔の中に剛を含み、剛の中に柔を含む2)、ということが要求されます。

太極拳を行なう時のリズムはゆっくりと変わらぬ速さで、手と足の動作を一致させ、行く曇や水の流れのように自然に動き3)、早かったり、遅かったり、あるいは途切れたりしてはなりません。これが緩慢の意味です。しかし、速度が遅ければ遅いほどよいということではありません。遅すぎると必要以上に緊張し、動作が鈍くなり、呼吸と動作の協調もうまく行かなくなります。大切なのは、練習の時、心を落着かせて気持ちを整え4)、全身の気脈の流れを澱ませることなく、また、筋肉や関節などを圧迫しないで行うことです。


1)運勁如抽(ユンヂンルーチョウ)(スー)(yun jin ru chou si)

2)柔中寓(ロウジョンユー)(ガン)(rou zhong yu gang)、剛中寓(ガンジョンユー)(ロウ)(gang zhong yu rou)

3)(シン)(ユン)流水(リォウシュェイ)(xing yun liu shui)

4)(ピン)(シン)(ヂン)(チー)(ping xin jing qi)



7.協調(シエティアオ)(ワン)(ジェン)(xie tiao wan zheng) : 手、足、胴体、眼の動きを調和させる

協調完整とは、手と足および胴体の動きが調和することをいいます。もちろん、技法としての手・眼・体・足を協調させることも指しています。具体的には、練習する時に、動作の起落・進退・開合・伸縮・攻守・虚実・剛柔などの変化およびその意味を十分に理解し、手と足の動きを一致させる1)、全身の動きを協調一致させて整える2)、ということを念頭に置いて、手足と体の動きの関連を考えることです。

初心者は、往々にして手と足の動作が一致せず、腰を中心として四肢を連動させることがまだ理解できないため、胴体と四肢の動作がバラバラになってしまいます。しかし、繰り返し練習していけば、必ず動作は整ってきます。


1)上下相隨(シャンシャーシャンスェイ)(shang xia xiang sui)

2)(ジョウ)(シェン)節節(ヂエヂエ)(グアン)(チュアン)(zhou sheng jie jie guan chuan)



8.相連(シャンリェン)不断(ブードゥアン)(xiang liang bu duan) : 動作と動作をつなげて意識を切らさない

相連不断とは、太極拳の動作と動作は密接なつながりを持っていて長江の滔々たる流れのように連綿として途絶えない、つまり、動作は切れても力は切れず、力は切れても意識は切れない1)、ということです。しかし、太極拳はたくさんの動作の組み合わせなので、練習に対する要求を正しく理解し実行できなければ、人形のような動きになってしまいます。特に初心者の場合、個々の動作が未熟なため中断することが多く、次の動作にスムーズにつながりません。これ改善するには、まず一つ一つの動作を完成させ、そしてこれらの動作をつなげて意識を切らさないこと。これを重視して練習を重ねていくしかありません。そうすれば、相連不断の良い動きを身につけることができるでしょう。


1)勢断勁(シードゥアンジン)不断(ブードゥアン)(shi duan jin bu duan)、
 勁断(ジンドゥアン)(イー)不断(ブードゥアン)(jin duan yi bu duan)



9.虚実(シューシー)分明(フェンミン)(xu shi fen ming) : 虚と実をはっきり分ける

一般的に、太極拳で動作が完成にいたる時を実といい、動作の転換過程を虚といいます。また、体重を支える足のことを実といい、補助して体重を支えている足や移動している足のことを虚といいます。実の時は、力や気を沈めて充実させ、剛ではあるが硬くなってはいけません。虚の時には、柔和で伸びやか、軽やかで含みがあり、柔であるが軟弱であってはなりません。虚実分明とは、練習の中で虚と実をはっきり分けることです。虚実については太極拳理論の中で、一つの処には必ず一つの虚実があり、いたるところに虚実は存在している1)、と書かれています。つまり虚と実は、太極拳を行う時、意識・動き・手法・歩法などの中のどこにでもいつも存在しているのです。すなわち、虚と実は静止しているのではなく、互いに常に転換しているのです。この虚実の転換は、途切れない2)動きの中で、一つの動作から一つの動作へ、虚から実へ、実から虚へと絶え間なく発生しています。両者はまったく正反対のものですが、太極拳を行う場合それを対立させず、有機的に統一、転換していかなければなりません。これの言わんとするところは、虚の中に実があり、実の中に虚があるように3)、ということなのです。この虚実の統一と転換をきちんと理解すれば、太極拳の本来の意味を知ることができます。また、手法も歩法も乱れず、心身を統一することが容易になり、武術としても健康法としても良い練習効果が得られます。


1)一処(イーチュー)自有一(ズーヨウイー)虚実(シューシー)(yi chu zi you yi xu shi)、
 処処(チューチュー)(ゾン)此一(ツーイー)虚実(シューシー)(chu chu zong ci yi xu shi)

2)綿綿(ミェンミェン)不断(ブードゥアン)(mian mian bu duan)

3)虚中(シュージョン)(ヨウ)(シー)(xu zhong you shi)、実中(シージョン)(ヨウ)(シュー)(shi zhong you xu)



10.内外相合(ネイワイシャンフア)(nei wai xiang he) : 心身を統一する

内外の内とは、意識の活動、内気の運行であり、内外の外とは、体とその動きのことです。相合とは、高度に統一させるという意味です。内外相合を言い換えれば心身統一のことで、この統一は、必ず意識を主導としたものでなければなりません。要するに、心(意識)をもって気をいきわたらせて気で体を動かし1)、意識で動作を導く2)のです。ここまでくれば、太極拳の最高点に達したといえるでしょう。

具体的な練習方法としては、まず太極拳の技を知ること、そして意をもってその技の姿勢、手法や歩法、動作の方向、力の運用などを調整しながら行なうことです。意識を持つことで内気の運行は自然にそれに従うので、意識が行きつくところに気も行きつく3)ことになります。そして、この意と気の活動によって一つの内在的な力(内勁(ネイジン))が生じ、いわゆる、気がいたるところに力もいたる4)という状態になります。さらに、この内勁が技を通じて一つの気勢を成してきます。このようになれば内外相合ができたといえます。

しかし、練習する時にはもう一つ心身統一のポイントがあります。これは練習者の視線と動作を一致させることです。目は心の窓であるとよくいわれ、意識は目に表れるものですから、視線と動作が一致しないと意と気と技の統一、心身統一ができているとはいえません。ですから、最初の基本動作を練習する時から、意識の訓練を重視することが肝要です。


1)以心(イーシン)(シン)(チー)(yi xin xing qi)、(イー)気運(チーユン)(シェン)(yi qi yun shen)

2) 意領心随(イーリンシンスェイ)(yi ling xin sui)

3) (イー)(ダオ)(チー)(ダオ)(yi dao qi dao)

4) (チー)到力(ダオリー)(ダオ)(qi dao li dao)