太極拳の知識 本文へジャンプ


<練習する際の注意事項>


1.準備運動から始める
 太極拳の練習は、他の運動と同じように個人でも集団の場合でも、準備運動からはじまり、そして、基本練習(中心となる技や套路の練習)を経て、整理運動で終わるのが一般的です。まず、服装はゆったりとしたものを選んで着用します。準備体操は軽い運動から入り、身体各関節を回すように動かし、靱帯と筋肉を伸ばし、体を徐徐に動作に適応できる状態にしていきます。特に、太極拳運動は、重心をやや低くする中腰の姿勢が多いため、膝関節にかかる負担が大きいので、そのあたりを中心に十分な準備運動をしてください。そして、練習の最後には、軽い体操やマッサージ、散歩をするなど、筋肉の緊張の持続を解き、膝関節の疲労を解消して身体をリラックスさせる整理運動を忘れてはなりません


2.運動量を適度に調整する
 太極拳はゆっくりとした動きですが、中腰の姿勢で行うので、運動量は決して少なくはありません。運動量の多少は練習時間の長短だけでなく、姿勢の高低、動作の正確さ、速度にも関係があります。たとえば、姿勢が高いと足はあまり疲れません。姿勢が低いと足に負担がかかりますから高い時よりも疲れます。運動量が適当かどうかを知るのは大切なことですが、これは個人の体質や条件によって決めていいのです。一般的には、練習後ゆったりして満足感があり、気持ちが良ければ運動量は適当であるといえます。運動量が少ないと、関節や筋肉が十分鍛錬できず、鍛錬効果がでません。運動量が多すぎると、関節や筋肉の痛みを引き起こしたり、息切れを起こしたりしてしまいます。初心者は運動量をやや少なめにして、様子を見ながらだんだんと増やし、練習を重ねていけば、必ず体力がついてきます。体質的に虚弱な人、また持病があるような人は、コーチや医者の指導を受けながら、練習するのが一番いい方法です。体力が伴わなければ、全套路の動作を通して行う必要はありません。要領に基づいて、個々の動作を反復練習すれば、通して行った練習と同じ効果を十分得ることができます。



3.柔軟性の練習を重視する

太極拳の練習は中腰の姿勢で行うため、脚力の強化が重要なことは良く知られています。さらに、太極拳の動作の中には、脚を蹴り上げたり1)、片足を伸ばして低い姿勢になったり2)する動作があるので、ある程度の柔軟性が必要とされます。足を高く上げる必要はありませんが、各関節のまわりの靱帯や、筋肉の柔軟性が高ければ動きは軽くなり、動作はさらに伸びやかとなって、身体の老化も予防ができます。つまり、年齢を加えるにつれて靱帯や筋肉は少しずつ硬くなっていくので、それに対抗して少しずつ柔軟性の練習を重視し、靱帯と筋肉を鍛錬して行けば、若さを保つことができるのです。このためには、準備運動の後、足を股関節と同じくらい高さのバーにのせて伸ばす練習3)や、足を振り上げる練習4)を欠かさずに行うといいでしょう。


1)(ドン)(ヂァオ)(deng jiao)

2)下勢(シャーシー)(xia shi)

3)(ヤー)(トェイ)(ya tui)

4)(ティ)(トェイ)(ti tui)



4.順序を踏んで徐々に学ぶ
 太極拳を学ぶにあたって、初心者に見られる共通の難点は、動作が複雑でしかも数が多いため、しばしば、前の動作に気を取られて次の動作を忘れ、協調ができなくなる点です。指導者が初心者に早く動作を覚えさせるためには、次のように順序を踏まえて徐々に教えることが必要です。


①動作を分解して、手と足の動作を分けて教える。

②手と足の動作を合わせて練習させる

③繰り返しながら要領を理解させる。

④動作に熟練したら協調性に注意させる。

⑤意識と動作が統一された内外相合の段階へ進む


 こういう順序を踏まえて徐々に学べば、年齢・体質を問わず誰でも、太極拳を自分ものとすることができます。また、上達も早いでしょう。しかし、早く効果を上げようと焦り、動作を真似ることだけを考えて要領が後回しになっては、いくら長時間練習しても時間の無駄で、動作の質も低く効果が得られません。鍛錬効果の良し悪しは、姿勢の正確さと密接な関係にあることを認識しなければなりません。正確な姿勢と動作が保たれなければ、健身と医療効果を収めることは不可能であり、誤った姿勢・動作を矯正することは新しい動作を学ぶことよりも難しいのです。したがって、学習の最初から正しい練習法を理解し、信念をもって続けることを第一に、あわてずしっかりと基本を身につけ、一歩一歩進んで行くことが大切です。そうすれば必ず難点を克服して上達することができます。



5.良い練習の環境を作る

日本では、中国人のように毎朝公園に行って、自然な環境の中で太極拳を行うことはなかなか難しいでしょう。もちろん、自然の環境の中で、良い空気を吸いながら太極拳を行うことが理想ですが、それだけがよい環境というものでもありません。環境には、自然環境はかりでなく、学習者本人が練習するときの心がけや、集団で練習する時の他人との関係も含まれます。技術の習得を目的にすることは当然ですが、健康という本当の目的を忘れてはなりません。学習者は必ず楽しい気持ちで太極拳を行なうようにし、集団で練習する時は、みんなで仲良く楽しい雰囲気を作ることが大切です。これによって体の鍛錬と共にストレスも解消し、心身両面でよい練習効果が得られるのです。



6.自分の生涯健康法とする

太極拳の技術を身につけ上達するには、確かに時間が必要です。三日坊主や、気分次第で続けたりやめたりしたら、進歩は絶対に見られません。太極拳は、人体の器官とその系統の整理機能を高め、新陳代謝を促進し、病気に対する抵抗力を増強させていくことができますが、このためには一定期間系統立った鍛錬をしなければなりません。すぐに効き目があるというわけではないのです。ですから、しばらく練習しても効果が表れないため動作の要領を習得しないうちに途中で投げ出してしまったり、体のあちこちに筋肉に痛みを感じてあきらめてしまったりする人も多いのです。でも、それではそれまでの努力が水の泡です。常に続けるということが大事なのです。

太極拳の特徴は、老若男女誰にでもできる運動であり、年を取っても楽しく、しかも奥深く、やればやるほど面白ということです。ですから、是非、自分の生涯健康法として長く続けていっていただきたいと思います。